上海の路上で出会った映画に思いを馳せて・・・。
2004年12月31日夕方。

その時、僕は中国西部域の四川省・成都の路上を歩いていた。
僕以外に、二人の日本人旅行者と共に。

彼らとは、その日の朝、チベット・ラサから成都に向かう飛行機の待合所で、
出会ったばかりだった。

日本から遠く離れたチベット、そして、観光に適さないと言われる、厳冬のオフシーズンに
チベットを旅してきた、もの変わりなメンバーだったと思う。

成都に向かう機内では、突然の乱気流により、機体が大きく上下し、一瞬のうちに
体中の穴という穴から冷や汗をかいて、その数十秒間は生きた心地がしなかった。

例えて言うなら、遊園地のアトラクションで、高いところから、下へ急降下するフリーフォールの無重力感を飛行機で経験したようなものだった。ただ、そこには遊園地のそれとは違って、生命の存続が危ぶまれるくらいの迫力があった。

今となっては、もうネタにしてしまってるが、僕はその瞬間、反射的に左右の肘掛を
わしづかみした。隣の中国人のおじさんも僕と同じことをしたので、その時、僕は
隣のおじさんと手を握り合ったという、笑うに笑えない事実だけが
記憶の中にしっかりと刻まれた。

成都空港で、飛行機を降りた僕等は「死ぬかと思った・・・」という、
あまりにもリアルで正直な思いを口にした。

同じ安宿に向かった僕ら3人は、夕ご飯を近くの寺の中にある精進料理屋で
済ませることに決めた。

その夕ご飯に向かう途中の道での会話だった。
左側には麻雀屋が並び、右側には寺の壁が続く、でこぼこの道を歩きながら、
なぜかそういう話になった。

一番好きな映画は何?
僕はこのタイプの質問には弱く、その時も答えられなかったのだが、代わりに、最近見た映画で、強いインパクトで頭に残ってるのは『可可西里』だと、僕は答えた。

ちょうどレコードショップの前を歩き過ぎるところで、
店頭に張られた『可可西里』のポスターが目に入ってきた。

それはチベットを舞台にした映画で、チベットに行く2ヶ月くらい前、上海の路上の店で偶然そのDVDを手にしたのが、きっかけだった。

『可可西里』というチベットの高山エリアはすごいんだよ、そしてそこにしか住まないカモシカを狙った密漁者が後を絶たないんだ、そんな話を成都の町でしていた。

それから帰国後、しばらくその映画の存在を忘れていた。

それが、つい最近の新聞にチベットの山々の写真が写された『ココシリ』と書かれた映画の写真、そして沢木耕太郎、椎名誠らの講評が添えられた広告がでかでかと1ページ全面を飾っていた。

心の中が静かに熱くなっていくのを感じた。
2004年に中国の路上で何気なく出会った映画『可可西里』が、
日本で『ココシリ』となって上映されることになったんだ・・・。

その時に、この成都での情景がふと思い浮かんだ。
日記を書いてるわけでもないのに、その時の情景がありありと思い出せたことに、
驚きと喜び、そして何かの縁を感じた。




■映画『ココシリ』 公式サイト■

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by shuxaku | 2006-06-06 23:08 | +++ Diary +++
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