海辺のほろ酔いキャンプ@式根島 ~プロローグ~
旅のはじまりは、いつでもワクワクする。
さらにそれが、「船旅」という非日常なスタートからはじまると、
期待度もぐっと高まってくる。

けど、今回のスタートは初っ端から、冷や汗ものだった。
金曜夜、東京・竹芝発、伊豆諸島方面へのフェリーに、僕は間に合わなかっのだ。
仕事が予想以上に長引いたからせいでもあるけど、そんな理由で旅を放棄もしたくなかった。

フェリーは東京を出た後、横浜に一度寄港するから、それになんとか間に合うように行くしかない。

僕は渋るタクシー運転手に頼み込んで、自転車が入った大きな輪行袋をトランクに詰め込み、稲毛駅まで向かった。
それから自転車を担ぎ、駅の階段を走り、やってきた快速電車に滑り込むように飛び乗った。あと30秒到着が遅ければ、今回の旅は架空の話で終っていたかもしれない、そんな緊迫感の中で、僕はの旅は始まった。

けど、まだ安心はできない。

横浜という土地に馴染みがない自分にとって、横浜の大桟橋という場所は遠い存在だった。一番最寄駅の関内駅からフェリー乗り場まで徒歩15分、桜木町駅からはタクシーで5分。
フェリーが横浜を出港するのは、23:30。僕が横浜に着いたのが、23:10。

まだ僕は横浜駅にいるのに、出港するまで、わずか20分しかない。

僕に残された方法は2つだけだった。
桜木町駅からタクシーに乗る方法、または関内駅から自転車で向かう方法。

桜木町からタクシーで行けば、楽だが、自転車を持っていることを理由に拒否される可能性もある。それに、今日は小雨ぱらつく金曜日の夜だ。タクシー乗り場は混んでいるのではないか、5分ほどの近距離のために、タクシーも長い列作って待っている訳ではないだろう。

だからといって、関内駅から自転車で行く方法も戸惑っていた。タイヤ等をはずして、輪行袋に入れた自転車を取り出して、組み立てて、時間内に迷わずにいけるか。。。

横浜までの向かう電車の中で、僕は旅のはじまりとは思えないような
葛藤を繰り返していた。

けど今思うと、この波乱に満ちたスタートが、今回のキャンプの行く末を示唆していたのかもしれないと僕は思った。

結局、僕は自転車で行く方法を選んだ。
関内駅改札をSUICAでスルーすると、僕は自分でも驚く位のスピードで自転車を組み立てた。
そして、東方向の港へ向かって、僕はエメラルドグリーンのビアンキを走らせた。

この時の僕にとっては、赤信号も青信号も、意味のないネオンと化していた。

100mダッシュ並みの、無酸素運動で、僕はペダルを漕ぎ続けた。
フェリー乗り場が見えてきた。最後の上り坂を、スピードが落ちぬよう、
必死で前へ前へと走らせる。

昔、自分がまだ高校生の頃。必死に駅まで走って、駅の階段を駆け上って、乗ろうとしていた電車に、目の前3mのところで、無情にもドアが閉まり、電車が走り出したことがあった。そんなシーンが頭の中をよぎった。

がむしゃら。
この時の僕は、この言葉しか知らぬ動物のように、心の中で祈りながら、フェリー乗り場までなんとかこぎつけた。改札通過してから、自転車組み立て含めて、フェリー乗り場まで、5分かからなかった。
「着いた」と思う間もなく、自転車を降りると、まず背負っていた55Lのカリマーのザックを下ろした。僕を待っていた友人がほっとしたような顔で待合室から出迎えてくれた。
それから、噴出す汗の中、僕はタイヤとブレーキワイヤーをはずし、輪行袋に自転車を入れた。

なんとか間に合った。これで、旅が出来る。
僕は自分が祈っていたものに感謝した。

フェリー到着のアナウンスが流れ、僕ら男3人はフェリー乗り場へ向かう。
霧雨の中、みなとみらいのネオンが幻想的に光り、そのネオンを消すように大きく近づいてくるフェリー。甲板には見知らぬ多くの旅人が僕らを出迎えてくれているようだった。
b0069430_23433342.jpg

b0069430_23435537.jpg


そして、その甲板にいる人の多さと、甲板の上に見えるテントらしきものに目を疑いながら、僕らはフェリーに乗り込んだ。

「難民船だ」僕は乗った瞬間に、そう思った。

b0069430_2344983.jpg

そこら中にレジャーシートが敷かれ、気だるそうに横になる者、車座になって酒のイッキコールで騒ぐ者、自分たちの砦を築くテント群、ミノムシのように青い毛布に包まる者、一種のカオス的な雰囲気が漂っていた。僕らは30分ほどフェリー内を歩き回って、やっと自分たち分のスペースを確保することができた。「2等席なし」という僕らのチケットに書かれた文字が持つ意味は、自分が予想していた以上に、予想を超えたところにあるのだと理解した。

僕らの波乱に満ちた式根島キャンプ旅はこうしてはじまった。
[PR]
by shuxaku | 2008-05-06 23:21 | +++ Outdoor +++
<< 海辺のほろ酔いキャンプ@式根島... 小夏日和 ~ツナガリ~ >>